妊娠中のママには身体の面でも精神面でもつらいことがいろいろやってきます。妊娠中に一番辛い時期はいつなのでしょうか。そしてそれはいつ終わり、どう乗り越えればよいのでしょうか。
私自身、ハイリスク出産を経験しています。また流産も経験しています。自然分娩・帝王切開ともに経験者です。
そんな私の体験談や、周囲のママたちの奮闘ぶりをご紹介しながら、つらい時期を乗り越えるコツを一緒に模索してみませんか。
妊娠中に辛い時期
妊娠中、「いつが一番辛いか」「何が一番つらいか」は人によって違います。また、出産してみなければ、自分自身でもわからないものです。
一般的に言われる妊娠中の辛い時期をピックアップし、どんなことが起きるのかを事前に知っておくことも、つらい時期を乗り越えるために役立ちますよ。
つわりが始まった時期
妊娠初期にやってくる「つわり」。多くのママが苦しみますが、その程度はさまざまです。ひどいと脱水症状が重くなり、重症悪阻という状態になります。
私は2度の出産で2度、重症悪阻と診断されて入院しました。1ヶ月ほどは点滴だけで乗り切り、あまりにも嘔吐が激しく血が出たほどです。
体力が極限まで落ちてしまい、一日中うつらうつらしているのに熟睡はできません。体中が痛むのに、自分では寝返りすることもつらい状態でした。
中には私よりもっと激しいつわりに苦しむ人もいます。だいたいは安定期に入るころに消えていきます。長引く人もいますが、出産すればおさまりますよ。
また、入院中に助産師さんに言われた言葉で私は救われました「つわりがあるのは赤ちゃんが頑張っている証拠。生きてる証しだよ」。
この言葉は、出産まで私を支え、生まれてからもいろいろな壁に直面した私を勇気づけてくれました。
切迫流産と診断された時
切迫流産と診断されるのは、妊娠初期です。切迫流産は「流産になる可能性がある」状態で、流産とは異なります。
でも、妊娠の継続が危ぶまれる状態には変わりありません。初めての妊娠で切迫流産と診断されると、本当に不安になってしまいますよね。
切迫流産になると、安静が指示されます。重い場合や家では寝ていられない環境の場合は、入院して安静にすることもあります。
切迫流産は、時とともに胎盤がしっかり形成され、出血などがなくなって流産の危険が去るまでの辛抱です。乗り切れば、赤ちゃんは無事に産まれてきますよ。
緊急入院が決まった時
重症悪阻や切迫流産などで緊急入院が決まった時、ママは「赤ちゃんは無事なの?」「家はどうしよう」「上の子はどうしよう」「仕事はどうしよう」などパニックになってしまうかもしれません。
緊急入院が決まるきっかけはさまざまです。前置胎盤など胎盤の状態に異常が見つかった時や、ママの体内に血栓が見つかった時も入院になります。
さらに妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などになり、食事などの管理や安静が必要になったときも入院が指示されます。
出産するときは、自宅出産を望まないかぎりほとんどのママが入院を経験します。でも、その前に入院になってしまうなんて、想像もしていないのではないでしょうか。
でも、実際にさまざまな理由で緊急入院をした経験を持つママはたくさんいます。長期になると、妊娠初期から出産まで病院で過ごすことになるママもいます。
入院が決まった時には不安でいっぱいだったママも、そのうち「退屈」に苦しむようになります。ベッドの上という限られたスペースしか、安静中のママには許されていません。
よほど神経質なママではないかぎり、大部屋のほかのママたちと友だちになり、不安や愚痴を語り合うだけでも気持ちが楽になりますよ。
ハイリスク妊娠や赤ちゃんに病気や障がいがある可能性が分かった時
前置胎盤のようなハイリスク妊娠や、赤ちゃんに病気や障がいの可能性があるとわかった時は、ママもパパも非常にショックを受けるでしょう。
ハイリスク妊娠は多胎児(双子や三つ子)をはじめ、さまざまな要因があります。先ほどご紹介した緊急入院を要する病気や症状も、ハイリスク妊娠です。
また、最近は赤ちゃんのダウン症が出産前にわかるほか、心臓病や手足の奇形など、さまざまな病気がお腹にいるうちからわかるようになっています。
実は私の息子も障害を持っています。知的な発達に強い遅れのある自閉症です。多動も激しく、双子の弟との違いや遅れもたくさんあります。
でも、すべての子どもは等しく可能性をもって生まれてきます。障がいがあってもなくても、それは同じです。
自閉症はある程度成長しなければわからない脳の発達の特性ですが、ダウン症や心疾患なら出産前から知ることができることはたくさんあります。
最初は受け止められないでしょう。受け入れることはもっと難しいと思います。でも、お腹で元気に育っているのは、まぎれもなく愛する人との間に生まれるいとし子です。
「できないこと」を数えるよりも、「できるかもしれないこと」を数える方がずっと楽しい――それは間違いありません。
また、多くの病気や障がいには親の会や患者の会があります。ネットで調べたり、主治医に小児科を紹介してもらうなどして、生まれてくる赤ちゃんのことを少しずつ調べてみましょう。
妊娠後期
妊娠後期になると、お腹が大きくなって腰が痛くなったり、体力が消耗したり、貧血が強く出るようになることがあります。また下半身のむくみも強くなるママもいます。
息苦しさや寝苦しさがあり、熟睡できなくなるママもいます。出産に備えて、身体が血液量を増やしたり、母乳分泌ホルモンを準備し始めるためです。
また出産に対する不安が強くなるママもいます。陣痛の痛みに耐えられるか心配になったり、逆子が治らないことに悩むママもいますね。
息苦しさや疲れは、昼寝をするなどして乗り切りましょう。また、寝るときは「シムス体位」といって、体の左側、心臓側を下にして横になると眠りやすくなります。
その時、下になる左足はまっすぐに伸ばし、右足はももの付け根・膝を自然な角度で曲げます。お腹に負担がかからないよう、抱き枕などを使用するとより楽になりますよ。
むくみは下半身の血行不良が原因になっている可能性もあります。あまりにむくんでつらいときは、主治医に相談してみましょう。
腰痛がつらいときは、むやみに痛み止めや湿布薬を使ってはいけません。やはり主治医に相談し、骨盤ベルトなどを使用してみましょう。主治医のOKが出れば軽いウォーキングなどもおすすめです。
また出産に対する不安が強い場合は、助産師さんや経産婦さんに話を聞いてみましょう。またリラックスして赤ちゃんを産むイメージトレーニングや呼吸法を学ぶ、ソフロロジーもおすすめです。
帝王切開が決まった時
自然分娩するに決まっていると思っていたのに、赤ちゃんが逆子だったりハイリスク妊娠だったりで、急に帝王切開になってしまうこともよくあります。
昔は「産みの痛みや苦しみを知らなければ母性が目覚めない」などという迷信をまことしやかに言う人もいましたが、そんなことはありません。
私は自然分娩も、帝王切開も経験しました。自然分娩と比べて、帝王切開が痛くないということはありませんでした。
脊髄への麻酔注射も、手術中の処置も痛かったですし、産後は手術痕がひきつれて、傷が治るまではトイレに行くたびに激痛が走り、後陣痛の痛みすらわからないほどでした。
しかし手術痕の痛みが引いてからは、陣痛にかける体力を温存できた分回復が非常に早く、すぐに育児に慣れることができて、赤ちゃんが可愛いと思う余裕もできました。
自然分娩では陣痛が24時間続いたこともあり、その後血腫で危険な状態におちいったこともあってマタニティブルーが酷くなってしまい、母性のスイッチがなかなか入りませんでした。
自然分娩も帝王切開も、それぞれ一長一短があり、どちらが良いとは言い切れません。でも、どちらもママの命をかけた尊い「出産」には変わりません。
帝王切開に決まったからといって、悲しんだり悩んだりする必要はありませんよ。堂々と、赤ちゃんを無事に出産するための最善の方法と受け止めましょう。
手術に対する不安や疑問がある場合は、担当医にとことん質問しましょう。その権利がママにはあります。パパにも相談し、不安をしっかり解消してから手術に臨みましょう。
陣痛が始まった時
陣痛が始まると、「いよいよだ…と」緊張してしまいますよね。私は夜9時くらいにおしるしがあり、夜中に陣痛が始まりました。
陣痛は最初のうち、軽い生理痛のようなもので、普通に食べられますし、寝られる程度のものでした。初産婦だったせいもあり、なかなか進まず、10分間隔の期間がずっと続きました。
その後、5分おき、2分おきと進むうちに痛みは強くなってきましたが、それでも普段から生理痛が重い私は(こんなものか…たいして痛くないな)とのんびり構えていました。
出産1時間前からはかなり苦しみましたが、どちらかというと痛みに耐えているというより、いきみを逃がすのに必死でした。
出産自体はとても気持ちがよく、すっきりとした気分になりました。その後の産道血腫の痛みの方が何倍も強く、我慢しているうちに気が遠くなったほどです。
でも、痛みに対する感覚は人によって違います。また陣痛促進剤を使用しているか、していないかによっても違うようです。普段から強い生理痛がある人と、無い人によっても異なります。
いずれにしても、言えることはただひとつ「陣痛は生まれてしまえば終わり」ということです。後陣痛は初産の人の場合、あまり強くないことが多いようです。
どうしても陣痛の痛みが怖い、痛みに弱く耐えられそうにないという方は、無痛分娩という方法もあります。主治医に相談してみてはいかがでしょうか。
どうやって乗り越えたの?
ここまでも辛い時の乗り越え方や終わる時期などをピックアップしてきましたが、私や周囲のママの経験談をもう少し詳しくご紹介します。
私の体験談…つわり・双子妊娠・切迫流産・切迫早産・長期入院・帝王切開
私はつわりで2回入院しています。1度目の出産の時と、2度目の出産の時です。その間に一度流産を経験しています。
2度目の出産は双子だったので、ハイリスク妊娠でした。切迫流産・切迫早産を経験し、長期入院も経験しました。先ほどご紹介したように、自然分娩も帝王切開も経験しています。
双子妊娠中は産むまで続いた吐き気や食欲不振のほか、腎臓への負担や貧血などさまざまなリスクがありました。さらに主人と1年間離れて暮らさなければなりませんでした。
いろいろな痛みや苦しみを経験しましたが、一番辛いと感じていたのは「赤ちゃんが無事かどうかわからない」ことでした。
双子のうちひとりは、完全に私の骨盤の中に入り込んでしまったため、超音波になかなか映らなかったのです。そのため、成長度合いがまったくわかりませんでした。
双子はスペースも狭いため、ほとんど胎動を感じることができません。そのため、NSTをしてもらわなければ、赤ちゃんが生きていることさえ実感できなかったのです。
その不安の原因になっていたのは、直前に経験した流産でした。そのため、「生きていてくれさえすればいい。男でも女でも構わない。ただただ、生きて無事に産まれて」と祈る日々でした。
私の場合は、その不安と赤ちゃんを失うかもしれない恐怖が、出産までの苦しみをすべて吹き飛ばし、産後の育児の大変さも笑い話に変えてくれました。
生きていれば、赤ちゃんはその子のペースで育っていきます。そこにはどんな子であっても喜びがあります。赤ちゃんの成長を信じること――それが、一番辛い時期を乗り越えたパワーでした。
私が見てきたママたちの闘い
ハイリスク妊娠・出産を経験した私は、母子周産期医療設備が整った大学病院で長期入院していました。
そのため、周囲はハイリスク妊娠・出産のママたちばかりでした。中には小学校に上がる直前の上の子を置いて入院し、秋まで一度もランドセル姿を見ていないというママもいました。
4人の子を置いてきたママや、隣県に旦那さんを置いてきたママ、遠くの県から救急車で運ばれ、ほとんどお見舞いが来ないママもいました。
大学病院、特に産婦人科は院内感染を防ぐため、子どものお見舞いを固く禁じているところがほとんどです。私たちの入院していた大学病院は、特に厳しいことで知られていました。
私も、双子妊娠中の入院時は、上の子に一切会うことができませんでした。実家の母と父が面倒を見てくれていましたが、それでも寂しい思いをさせてしまいました。
また、それまでバリバリ働いていたキャリアウーマンが、突然の異常で出産まで絶対安静の入院になってしまったパターンもあります。
境遇が辛ければ辛いほど「早く産んで楽になりたい」と思ってしまうものです。でも、どんな辛い時期も、赤ちゃんが生まれればあっという間に過去になってしまいます。
赤ちゃんが生まれるまでは、どんなに長くても10月10日。人生の長さに比べればあっという間ですよね。
退屈や不安でつらい日々かもしれませんが、本やDVD、編み物など工夫して、長い時間を少しでも楽しく過ごしましょう。
無事に生まれてからが育児!その先をシュミレートして
妊娠期間中、どんなに辛いと思っていても、その先で待っている育児はもっと大変です。ママから自由な時間や睡眠時間、キレイになるためのお手入れの時間をどんどん奪っていきます。
特に最初の2ヶ月ほどは、3~4時間おきにおっぱいをあげなくてはなりません。眠くても寒くても、必ず起きて授乳しなければならないのです。
また生まれたての赤ちゃんは、背中に硬いマットがあたり、お腹になにもあたっていない「仰向け寝」を怖がります。
抱っこで寝かせたのに、ベッドへ移した瞬間に泣かれ、結局一晩中抱っこしていたという経験は、多くのママがしているのではないでしょうか。
そんな睡眠不足必定の怒涛の育児タイムが待っているのです。どんなに退屈でつらくても、身体がだるくても、休めるのは妊娠中だけ…そう考えて、しっかり英気を養っておきましょう。
まとめ
繰り返しになってしまいますが、妊娠中の一番辛い時期は人によって違います。これまでご紹介した以外にも、まだまだそういった瞬間はあります。
たとえば旦那さんと喧嘩をしてしまったり、お姑さんや実家の両親との間に確執が生まれたりすれば、とても辛い気持ちになりますよね。
そんな時は、逆に赤ちゃんを頼ってみましょう。お腹にいる間も、赤ちゃんはちゃんとママの存在を感じています。音も聞こえていますし、お腹に触れる手も感じることがあるようですよ。
お腹の赤ちゃんに絵本を読んであげたり、歌を歌ってあげるだけでもコミュニケーションになります。生まれてくるその日を楽しみに、辛い日々を乗り越えましょう。